近年、首都圏や都市部を中心に「区分マンション投資」が急増しています。特に1ルームや1K、1LDKといった新築~築浅の物件を対象に、手出しなし・フルローンで購入できるという謳い文句で、不動産投資初心者をターゲットにした販売が活発です。しかしその裏側には、一般消費者が気付きにくい“スキームのからくり”が存在します。本記事では、区分マンション投資の仕組みとリスク、そして実際に購入を検討する際の注意点について、実体験を交えながら解説します。
三為契約とは?売主・事業者・買主の3者が関わる販売方式
現在多くの区分マンション販売で採用されているのが「三為契約(三者間売買契約)」というスキームです。これは、
- 売主(元の所有者)
- 事業者(販売会社)
- 買主(投資家)
の三者間で、以下のように売買契約が結ばれる方式です。
- 売主 → 事業者に対して物件を販売
- 事業者 → 買主に対して、その物件を“利益を上乗せ”して再販売
このようにして、事業者は売主から仕入れた価格に約1割から場合によっては2割程度の利益を上乗せし、買主に転売します。買主にとっては、購入した時点ですでに“相場より割高”の価格で物件を取得していることになるのです。
銀行評価が販売価格の基準?融資の上限で価格が決まる構造
区分マンションの販売価格は、実は市場価格ではなく、提携している銀行の融資上限(評価額)によって決められています。
銀行によっては、以下のような収益還元法を用いて評価額を算出します。
- 家賃12か月分 ÷ 想定利回り(エリアや築年数による)
※例:家賃120万円 ÷ 4% = 3,000万円
つまり、「この物件なら銀行が○○万円まで融資してくれる」という逆算ありきで販売価格が設定されるのです。事業者は、この銀行評価と売主からの仕入れ価格との差額が利益になるため、評価額が高く利益が取れる物件だけを選んで買主に紹介してきます。
これが「手出しなし」「フルローン可能」という売り文句の背景にある仕組みです。
フルローンで資産形成?実際にはマイナスキャッシュフローに
区分マンション販売では、「35年後には資産になる」「節税になる」「生命保険の代わりになる」といった甘い言葉が並びます。しかし、購入時に割高な価格を支払っているため、家賃収入だけではローン返済と管理費・修繕積立金を賄えず、月々のキャッシュフローは赤字になることが一般的です。
また、こうした販売スキームでは空室リスクへの懸念が付きまといます。事業者は「空室保証」「サブリース契約」をセットで提案してくることが多く、一見安心できる仕組みに見えますが、ここにも注意が必要です。
- 空室保証の家賃は相場より低く設定されることが多い
- 途中で保証内容が変更・打ち切りとなるリスクもある
- 売却時にサブリース契約がネックとなり、評価が下がることも
このように、サブリースを導入することで、キャッシュフローがさらに悪化し、資産価値も低下する恐れがあるのです。
さらに、事業者は空室リスクや家賃下落リスクを十分にシミュレーションせず、投資家に都合のよい数字だけを提示する傾向があります。家賃が将来的に上昇し、それに伴って物件の売却価格も上がるようなケースでなければ、このスキームでの投資は非常に厳しいのが現実です。
家賃上昇により売却価格が増える物件であれば魅力的かもしれませんが、事業者は家賃のことはそこまでシミュレーションもせず、空室リスクを最大限おしてきます。そのうえでサブリース契約のようなもので空室保証をうたってくる事業者も多いです。そうなると、さらにキャッシュフローは悪化し、また売却時にも評価は下がってしまいますので要注意です。
一棟投資との違い:仲介契約で利回り・交渉の自由度が高い
一方で、一棟マンションやアパート、戸建て投資の場合は、売主と買主が直接契約する仲介形式が一般的です。そのため、
- 価格交渉(指値)が可能
- 売買価格が市場に近く、割高になりにくい
- 高利回り物件が見つかりやすい
- キャッシュフローがプラスになりやすい
など、投資家にとって有利な条件が揃いやすくなっています。
もちろん、一棟物件は購入価格が高くなりがちで、管理・運営の手間も増えますが、投資としての合理性・自由度は一棟投資のほうが高いといえるでしょう。
まとめ:区分マンション投資のスキームを理解したうえで判断を
区分マンション投資は、一見すると“手軽な資産形成”のように見えるかもしれませんが、その裏には転売利益を狙う事業者の論理が働いており、買主はそのコストを背負う形になります。
- 三為契約による割高な価格設定
- 家賃収入によるマイナスキャッシュフロー
- サブリースによるリスクと資産価値の低下
- 売却益の見込みが薄い物件が多い
こうした点を理解し、「自分にとって本当に適した投資かどうか」を慎重に判断することが重要です。
家賃上昇が見込めるエリア・物件であれば、このスキームでも利益が出る可能性はゼロではありません。しかし、その見込みが薄い場合や、家賃が下がるリスクをしっかりと想定しないまま契約するのは非常に危険です。
投資は“買って終わり”ではありません。“買った後どうなるか”までシビアにシミュレーションした上で、納得できる投資判断を下しましょう。

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