不動産投資の節税効果とは?
不動産投資を行う理由の一つとして「節税」を挙げる人は少なくありません。特に、減価償却を活用することで、不動産所得を意図的に赤字にし、課税所得を抑えることが可能です。しかし、「不動産投資による節税は単なる税金の繰り延べに過ぎない」という意見もあります。
実際には、投資家の所得状況によって節税効果は異なります。具体的には、
- 増税になってしまうケース
- 税金の繰り延べにとどまるケース
- しっかりと節税ができるケース
の3パターンに分けられます。本記事では、どのような場合に節税が可能なのか、減価償却と譲渡税の観点から詳しく解説します。
節税の基本:減価償却とは?
減価償却とは、不動産の建物部分の購入費用を耐用年数に応じて毎年経費として計上する会計処理です。たとえば、木造アパートの法定耐用年数は22年とされており、その間にわたって少しずつ費用を計上できます。
この減価償却費を活用することで、不動産所得を赤字にし、給与所得などの他の所得と損益通算することで課税所得を圧縮できます。その結果、所得税や住民税の負担が軽減される仕組みです。
ただし、不動産を売却する際には、減価償却した分だけ取得価格が低くなるため、売却益が増え、その分譲渡税がかかることになります。この点を理解しておかないと、最終的に思った以上の納税義務が生じる可能性があります。
節税のボーダーラインとは?
不動産投資による節税が真に意味を持つのは、所得税・住民税率と売却時の譲渡税率を比較したときに、前者の方が高い場合です。
基本的な考え方として、
「所得税率+住民税率(10%)」>「長期譲渡時の税率(20.315%)」
となる場合は、節税が可能と考えられます。
以下の国税庁のページで所得税率の詳細を確認できます。 所得税の税率表
概算ですが、目安として
- 課税所得(収入ー控除) - 不動産所得の赤字 が3,300,000円以上であれば、減価償却による節税効果が期待できます。
減価償却による具体的な節税シミュレーション
仮に、
- 課税所得が4,300,000円
- 不動産所得の赤字(減価償却費のみ)が1,000,000円
とした場合、
節税額の計算
項目 | 計算 | 節税額 |
---|---|---|
所得税 | 1,000,000円 × 20% | 200,000円 |
住民税 | 1,000,000円 × 10% | 100,000円 |
合計 | – | 300,000円 |
売却時の納税額(長期譲渡の場合)
項目 | 計算 | 納税額 |
譲渡税 | 1,000,000円 × 20.315% | 203,150円 |
最終的な節税効果は、
300,000円(節税) – 203,150円(譲渡税) = 96,850円の節税
このように、所得水準や売却時の状況に応じて実際の節税額が変わるため、計算した上で戦略的に不動産投資を行うことが重要です。
減価償却を活用する際の注意点
- 売却時の譲渡税を考慮する 減価償却によって一時的に所得税を下げられるものの、売却時には減価償却分が課税対象となるため、譲渡税を考慮する必要があります。
- 短期譲渡(5年以内)を避ける 短期譲渡(所有期間5年以下)の場合、税率は約39%と大幅に高くなるため、長期保有を前提とした運用が望ましいです。
- ワンルーム投資の節税メリットに注意 よくあるワンルームマンション投資のセミナーでは、「節税できる」と謳われることが多いですが、減価償却分の影響や長期的なリスクをしっかり考慮する必要があります。
- 不動産業者の説明を鵜呑みにしない 実は、不動産会社の担当者でも、減価償却が取得価格を下げ、売却時に譲渡税が発生することを理解していないことが多いです。特にワンルーム投資セミナーなどでは、この重要な点が説明されないケースがほとんどです。
まとめ
不動産投資による節税は、「単なる税の繰り延べ」なのか、それとも「実際に節税が可能」なのかは、投資家の所得水準や赤字の規模によって異なります。
- 課税所得が高い人ほど節税効果が大きい
- 売却時の税金を考慮しないと、結局増税になる可能性がある
- 減価償却の仕組みを理解し、戦略的に活用することが重要
節税を目的に不動産投資を始める場合は、長期的なキャッシュフローや出口戦略も考えながら、慎重に判断しましょう!

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