はじめに|不動産投資と事業主借の関係とは?
不動産投資を行っていると、事業主借が登場する場面が多くあります。 この文脈での事業主借とは、個人資金から不動産投資に充当させた資金を指し、法人でいうところの「役員借入金」に近い概念です。 しかし、事業主借の金額が大きいと、銀行融資の面で不利になることがあります。
本記事では、事業主借の基本知識から、銀行融資に与える影響、具体的な対策まで詳しく解説していきます。
事業主借の基本知識
①. 事業主借とは?
事業主借(じぎょうぬしがり)とは、個人事業主が個人の資金を事業に投入した際に生じる勘定科目です。 例えば、
- 個人の銀行口座から事業用の銀行口座へ資金を移動した場合
- 個人のクレジットカードで事業の経費を支払った場合
- 事業のために一時的に個人資金を使った場合
このようなケースでは、事業主借として計上されます。
②. 事業主借と事業主貸の違い
一方で、事業主貸とは、事業用の資金を個人用途に使った場合に発生する勘定科目です。 例えば、
- 事業用の口座から個人口座へ資金を移動した場合
- 事業用のクレジットカードでプライベートな支払いをした場合
このようなケースでは、事業主貸として処理されます。
③. 法人の「役員借入金」との違い
法人の場合、個人資金を会社に貸し付けると「役員借入金」として扱われます。 一方、個人事業主の場合は「事業主借」として計上され、厳密には負債ではなく「資本の振替」として扱われます。 しかし、銀行からの融資審査の際には、事業主借も負債とみなされるケースがあるため注意が必要です。
事業主借が発生する具体的なケース
①. 個人資金から事業用口座へ資金を移動
例えば、
- 不動産取得時の頭金や手数料を個人資金で支払った場合
- 修繕費やリフォーム費用を個人資金から立て替えた場合
これらの支出は事業主借として処理されます。
②. プライベートのクレジットカードを利用した場合
個人のクレジットカードを利用して事業経費を支払うことも、事業主借が発生する典型的なケースです。 この場合、事業に関わる部分のみを家事按分して経費計上します。
具体例としては、
- 通信費(インターネット、携帯電話料金)
- 自動車関連費用(ガソリン代、駐車場代)
- 自宅兼事務所の家賃・光熱費
- クレジットカードの年会費(事業利用分のみ)
これらの費用は、合理的な基準で按分して経費計上します。
家事按分についてはこちらのブログもご覧ください。
事業主借が多いと銀行融資に不利になる理由
①. 「自己資金不足」と判断される
銀行は、融資審査の際に自己資金の割合を重要視します。 事業主借が多いと、自己資金が不足しているとみなされ、追加融資が受けにくくなる可能性があります。
②. 「資金繰りが苦しい」と判断される
事業主借が多いと、事業運営に十分なキャッシュフローが確保できていないと銀行に判断される可能性があります。 特に、事業の収益が安定していない場合、資金繰りのリスクが高いとみなされます。
③. 「総負債」として見られる可能性がある
銀行によっては、事業主借も負債としてカウントすることがあります。 この場合、借入可能額が減少する可能性があります。
事業主借があるときの銀行対策
①. 事業主借を減らす
最もシンプルな対策は、事業主借の金額を減らすことです。
方法としては、
- 事業用口座から個人口座へ資金を戻す
- 事業の収益を活用して事業主借を相殺する
このようにして、事業主借を圧縮することが可能です。
②. 銀行に事業主借の性質を説明する
融資の際には、銀行に対して「事業主借は一時的な資金移動であり、返済負担がない」ことを説明するのが有効です。 事業の安定性をアピールすることで、銀行の評価を改善できます。
③. 法人化を検討する
不動産投資が一定の規模に達している場合は、法人化も選択肢の一つです。 法人化すれば、「役員借入金」として計上でき、事業主借の影響を抑えられます。 また、銀行融資の際にも、法人の財務状況をベースに審査を受けられるため、融資が受けやすくなる可能性があります。
まとめ
- 事業主借は個人資金を事業に投入した際に発生する
- 事業主借が多いと銀行融資の審査で不利になることがある
- 銀行融資を有利にするためには、事業主借を適切に管理し、銀行に正しく説明することが重要
- 規模が大きくなった場合は法人化を検討するのも一つの手
事業主借の管理を適切に行いながら、銀行融資をうまく活用して不動産投資を成功させましょう。

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