はじめに|なぜ修繕積立金が重要なのか?
前回の記事では、区分マンション投資における「家賃設定」の重要性についてお伝えしました。家賃が安く設定されている物件を購入し、相場通りに引き上げて売却することで利回りを高め、出口戦略にも強くなるというお話でした。
しかし、家賃以外にも見落としてはいけないコストがあります。それが「修繕積立金」です。
修繕積立金は家賃収入から確実に引かれていく固定支出です。表面利回りが高く見える物件でも、修繕積立金が高ければ実質利回りは大きく削られます。今回は、初心者大家が失敗しないために知っておきたい「修繕積立金」の基本知識と、将来にわたって安定運用するための見極めポイントをまとめます。

修繕積立金とは?管理費との違いは?
「修繕積立金」は、マンション全体の長期的なメンテナンス(大規模修繕)に備えるための積立金です。
一方、「管理費」は日常的な共用部分の管理(エレベーター保守、清掃など)に使われます。どちらも毎月のコストとして請求されますが、修繕積立金のほうが将来のために使われる“貯金”のような性質を持っています。
修繕積立金の目安|どれくらいが妥当なのか?
国交省のガイドラインや過去の事例などから見ると、1R〜1Kの区分マンション1戸あたり、15年ごとに行われる大規模修繕では40〜60万円程度が必要とされています。つまり、1年あたり約3〜4万円(月あたり3,000円程度)の積立が必要という計算です。
▼ざっくりとした目安:
専有面積 | 1回あたりの大規模修繕費用(15年想定) | 月あたりの積立目安 |
---|---|---|
20㎡前後 | 約40〜60万円 | 約2,500〜3,500円 |
これよりも積立金が著しく安い場合は、将来値上げされる可能性があるので注意が必要です。
15年後の大規模修繕を想定して収支計画を立てる
マンションは、築10〜15年を目安に「大規模修繕」が実施されます。外壁、屋上防水、給排水設備、エントランスなど、共用部分の劣化をまとめて修繕する重要なタイミングです。
たとえば、今購入しようとしている物件が築8年だったとすると、7年後に大規模修繕が控えている可能性があります。現在の積立水準が不十分であれば、追加徴収や急激な積立金増額のリスクもあるわけです。
修繕積立金の将来計画は「重要事項調査報告書」で確認できる
購入検討段階で「重要事項調査報告書」を取得することは極めて重要です。この書類には、以下の情報が記載されています。
- 現在の修繕積立金の金額
- 長期修繕計画の有無
- 修繕積立金の増額予定
- 過去の修繕履歴と積立状況
- 管理組合の財政状況
特に「修繕積立金の残高」や「長期修繕計画の内容」は要チェックです。残高が少なければ、今後大幅に積立金が引き上げられる可能性が高くなります。
投資家目線での修繕積立金チェックポイント
以下のような視点を持つことで、将来の不確実性を抑えられます。
- 修繕積立金が低すぎないか?
→表面利回りを高く見せるために異常に低く設定されていることも。目安より低ければ要注意。 - 過去の修繕履歴は整っているか?
→築10年以上経っているのに大規模修繕が未実施であれば、近々費用負担のリスクあり。 - 管理組合が機能しているか?
→修繕計画の存在や、積立の実行状況、議事録の内容などで管理状態をチェック。
修繕積立金が安定している物件を選ぶには?
物件選定時には、価格や立地だけでなく「管理組合の質」にも注目しましょう。
- 長期修繕計画が定期的に見直されている
- 修繕積立金が計画的に積まれている
- 過去の修繕実施履歴が明確
- 管理会社の評判が良い
これらが揃っていれば、将来にわたって「想定外の出費リスク」を減らすことができます。
終わりに|修繕積立金まで見てこそ、優良物件
初心者大家の多くは「家賃収入」に目が行きがちです。しかし、区分マンション投資では、毎月の支出=固定費のインパクトも無視できません。
修繕積立金の目安を理解し、15年スパンでの収支予測を立てることが、投資成功への近道です。
購入前には必ず重要事項調査報告書を入手し、将来的な積立水準を含めて、シビアに判断しましょう。利回りだけでなく、“管理の質”を見極める目が、投資家としての差になります。


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